福島県・葛尾(かつらお)村。ここは阿武隈の山々に囲まれた高原の里です。地元の訛りで「かづろう」と呼ばれるこの小さな村では、古くから「結(ゆい)」という文化を大切に、皆がひとつの家族のように暮らしてきました。四季折々の息づかいに合わせて、森や田畑に生きる。しかし、そのような暮らしは明治以降の近代化が進むにつれて失われていき、2011年の東日本大震災によって、もはや風前の灯火となってしまいました。1500人いた住民は400人まで減り、今では村の存続自体が危ぶまれている状況です。そのような中にあって私たちは、たとえ400人の村でも人びとが幸せに暮らしていける方法を模索し続けています。
もう一度、葛尾をめぐる「人・時・大地」を取り戻したい。自然に寄り添い、人びとが手を取り合って生きていく。土地の恵みに感謝をしながら、限りある資源を上手に循環させていく。それは単なる「むかしの暮らし」の再現ではなく、いま現代社会が取り戻すべき持続可能な姿とも重なるのではないでしょうか。
私たちは、村の中だけでなく村の外にいる人たちともつながりを深め、想いでつながる人口を増やしていきたいと考えています。そのつながりがきっと、葛尾を再生する力になる。そのための接点として、この「かづろうものがたり」を立ち上げました。かづろうものがたりとは、葛尾村とそこに関わる一人ひとりの間に紡がれる物語です。かつてここにあった人と自然の関わり、馬との暮らし、お祭り、伝承芸能など、失われかけた土地の記憶を掘り起こし、それを丁寧に編み直していく。その過程に参加することで、あなたと葛尾のあいだに新しい物語が生まれます。ぜひ、あなたの肌でかづろうの人や自然を感じてください。その物語ひとつひとつが、やがてこの村の新しい風景になっていくのだと思います。
葛尾村 移住定住促進プロジェクト